単身赴任中の帰省でけが。労災の確認に必要な勤務日・住居・経路は?
帰省中だから対象外、と決める前に
単身赴任中の社員から「週末に家族の住む家へ帰る途中でけがをした」と連絡があったとき、会社では何を確認するでしょうか。休日の私用だと判断する前に、赴任先と帰省先の住居、勤務日、移動の経路を整理する必要があります。
労災保険の通勤には、一定の要件を満たす単身赴任者の住居間の移動も含まれます。ただし、単身赴任手当を支給していることや、帰省旅費を精算したことだけで対象と決まるわけではありません。
今回は、国内で単身赴任している社員が、家族の住居と赴任先の住居との間を行き来する場面を扱います。転勤に伴う最初の赴任行程や、海外派遣の特別加入とは分けて確認しましょう。
転任と、別居に至った事情を確認する
対象となる住居間移動には、転任により、それまでの住居から新しい勤務先へ毎日通うことが困難になり、住居を移したことなどの要件があります。単に会社から離れた場所に家があるというだけでは足りません。
厚生労働省の通達では、やむを得ない事情で配偶者等と別居することになった労働者を対象として整理しています。配偶者が引き続き働く場合や、本人・配偶者の所有する住宅を管理するために配偶者が住み続ける場合などが示されています。
配偶者のいない社員についても、子や、同居して介護していた要介護状態の父母・親族との別居などに関する要件があります。「独身だから対象外」とも、「家族が残っていればすべて対象」とも一律には言えません。
実務では、転任辞令と単身赴任の申請内容を照合し、転任日、旧住居と赴任先住居、別居の事情を確認します。確認する目的を本人へ伝え、判断に必要な事情を整理する方法が考えられます。
勤務日と移動日を、一つの予定表で見る
住居間の移動は、仕事との関連も必要です。岩手労働局の案内では、原則として就業日の前日・翌日までに行われる移動について、就業との関連性が認められると説明しています。
厚生労働省の通達では、帰省先から赴任先へ向かう場合は勤務の当日又は前日、赴任先から帰省先へ向かう場合は勤務した当日又は翌日が基本です。それより日が離れる場合も、交通機関の状況等の合理的な理由があるかを確認します。
会社では、勤怠記録と本人の移動予定を並べてみましょう。最終勤務の終了日時、帰省の出発・到着日時、次の勤務開始日時をつなげると、確認すべき間隔が見えてきます。
年休や連休を挟んでいる場合も、「週末の帰省」という呼び方だけで処理しないことが大切です。移動の目的と実際の日程を聞き取り、判断しにくい事情は資料をそろえて確認します。
いつもの経路から外れた理由も残す
通勤とされるには、合理的な経路と方法による移動であることも必要です。富山労働局は、通常使える経路が複数ある場合や、交通事情による迂回などについて説明しています。
一方、通勤と関係のない目的で経路を外れたり、移動を中断したりすると、原則としてその間とその後の移動は通勤となりません。日常生活上必要な所定の行為を、やむを得ない事情で最小限行う場合には例外がありますが、その行為中まで対象になるという意味ではありません。
事故の連絡を受けた担当者は、通常の行程と当日の行程、立ち寄った場所、目的、時刻を分けて記録するとよいでしょう。本人の説明と予約・乗車等の記録が食い違う場合は、先に事実を確かめます。
会社の届出情報を、事故対応につなげる
単身赴任の申請は、手当の審査だけに使われがちです。帰省中の事故にも対応できるよう、本人が最初に連絡する先と、勤怠・転任情報を確認する担当者を決めておくと、聞き漏らしを減らせます。
対象となるかの判断を、上司の「帰省は私用だろう」という一言で終わらせないことが重要です。逆に支給を約束するのでもなく、確認した事実と未確認点を整理し、管轄の労働基準監督署等に確認しながら手続を進めましょう。
自社で確認すること
- 転任辞令と単身赴任申請を照合し、住居を移した経緯、家族との別居の事情、両住居を確認する。
- 勤怠記録と帰省の行程を並べ、勤務の終了・開始日時と移動日時、日が離れる場合の理由を確認する。
- 事故受付の手順を見直し、経路・立寄りの聞取項目と、勤怠・転任情報を確認する担当者を決める。
単身赴任の届出と労災の事故対応をつなげ、判断に必要な記録を整えたい場合は、社会保険労務士法人エリクスへご相談ください。
参考資料(一次資料)
厚生労働省「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律等の施行について」別紙「通勤災害の範囲について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2480&dataType=1&pageNo=1
岩手労働局「通勤災害について」
富山労働局「業務災害・複数業務要因災害・通勤災害・第三者行為災害」
https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/newpage_00442.html
