退職者から証明書と精算の請求。離職票・給与日待ちにしていませんか
退職した社員から、証明書の発行や未払いの給与の精算を求められたら、「離職票を準備中です」「次の給与日に支払います」と答える前に、請求の内容と受けた日を確認しましょう。退職証明書の交付と退職時の賃金精算には、それぞれ労働基準法のルールがあります。
会社側では、退職に伴う仕事を一括して管理しがちです。まずは書類の交付、賃金の支払い、預かっている本人の金品の返還に分け、担当者と処理状況をそろえることが大切です。
退職証明書は、請求された事項を確かめる
労働基準法第22条では、退職する労働者が一定の事項について証明書を請求した場合、会社は遅滞なく交付しなければならないと定めています。自己都合退職の場合も対象です。
証明の対象となるのは、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由です。退職の事由が解雇である場合は、その理由も含みます。
注意したいのは、これらを毎回すべて記入するわけではないことです。本人が請求していない事項は記載してはいけないため、自社の定型書式を使うときも、先に希望する証明事項を確かめます。
実務では、受付時に請求内容を記録し、人事記録、雇用契約書、賃金台帳などと照合して作成すると整理しやすくなります。以前の社員向けに作った書式を流用する場合も、項目や記載内容をそのまま残さないようにしましょう。
離職票を渡しても、別の交付義務は残る
厚生労働省のQ&Aは、雇用保険の離職票を退職時の証明書の代わりにはできないと説明しています。離職票を渡していても、本人から退職証明書の請求があれば、別に対応する必要があります。
証明書の用途は本人に委ねられており、会社の交付義務とは関わりません。また、退職証明書の請求回数に制限はありません。
社内の退職手続一覧では、離職票と退職証明書を別の欄に記録しておくと、対応漏れに気づきやすくなります。作成しただけで完了にせず、交付した日と方法まで残しておきましょう。
退職後の賃金は、請求があれば給与日を待たない
労働基準法第23条は、退職の場合に権利者から請求があれば、7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還するよう定めています。退職の場合の権利者は、労働者本人です。
通常の給与支払日がまだ先でも、請求を受けた日から7日以内の対応が必要です。「退職した日から一律に7日」ではなく、請求の有無と受付日を確認することが重要になります。
対象となる金品には、会社が保管している本人の積立金や保証金のほか、労働に関連して預かっている本人所有の物品も含まれます。給与担当者だけでは把握できないものがないか、総務などの担当者にも確認しましょう。
ただし、退職金は、就業規則等であらかじめ支払期日が特定されていれば、その期日までに支払えば足りるとされています。通常の賃金と退職金を分け、賃金規程・退職金規程の該当箇所を確認してください。
争いのない金額まで、まとめて保留しない
賃金や金品の有無、金額などに争いがある場合でも、異議のない部分は請求から7日以内に支払い、または返還する必要があります。全体の話合いが終わるまで、すべての処理を止める扱いには注意が必要です。
勤怠記録と賃金台帳を照合し、確認できた金額と、認識が食い違っている項目を分けて整理しましょう。会社が異議を述べていても、本来支払うべき金額については、民事上の支払遅延の責任が残ることがあります。
受付から交付・支払いまでつなぐ
退職時の請求が上司に届き、人事や給与担当者への連絡が遅れると、対応できる時間が短くなります。社内では、誰が受けても受付日と請求内容を担当者へ伝える流れを決めておくと安心です。
証明書は請求事項と記載内容、賃金は請求日と支払予定日を照合します。対応が遅れた場合も、担当者の注意だけで終わらせず、情報が止まった箇所や資料不足を確かめ、次の退職手続に反映しましょう。
自社で確認すること
- 退職手続一覧で、証明書の請求事項・交付日と離職票の対応状況を別々に確認する。
- 請求の受付記録、勤怠記録、賃金台帳を照合し、7日以内の支払いが必要な賃金と支払予定日を確認する。
- 退職金規程の支払期日と預り金・預り品の記録を確認し、それぞれの担当者と返還状況を整理する。
退職時の書類交付や精算で対応が止まりやすい箇所を整理したいときは、社会保険労務士法人エリクスへご相談ください。
参考資料(一次資料)
厚生労働省「確かめよう労働条件」退職時の証明に関するQ&A
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/kaiko/q9.html
兵庫労働局「解雇・退職」(退職時の証明・金品の返還)
長崎労働局「労働法の基礎講座 第46回 退職時の証明・金品の返還」
https://jsite.mhlw.go.jp/nagasaki-roudoukyoku/content/contents/no46-25112501.pdf
(確認日:2026年11月2日)
