食事補助は非課税なら安心?支払方法と社会保険の計算を別々に確認
食事補助を始めるときは、会社の負担額だけでなく、「誰が店に代金を払い、社員からいくら受け取るのか」まで決めておきたいところです。同じ昼食代の補助でも、食事を支給する場合と、社員に現金を渡す場合では、所得税の取扱いが変わります。
さらに、所得税で給与として課税されない食事でも、社会保険で報酬に含めるかは別の基準で確認します。福利厚生の制度を決める担当者と給与担当者で、導入前に支払方法と計算方法を共有しましょう。
食事の支給と、現金の補助を分ける
国税庁は、食事の支給について、社員が食事の価額の半分以上を負担し、かつ会社負担分が月額7,500円以下であれば、給与として課税しないと案内しています。月額上限は消費税・地方消費税を除いた金額で判定します。
上限内であることだけでは足りません。本人負担が半分未満など、要件を満たさない場合は、食事の価額から本人負担額を差し引いた残額が給与として課税されます。
また、社員が飲食店へ代金を払い、会社が後から食事代の一部を本人へ振り込む方法は、通常の昼食補助では金銭の支給です。領収書を集め、会社負担を半分にして月額上限を設けても、それだけで食事支給の非課税の取扱いになるわけではありません。
国税庁の質疑応答でも、この点が示されています。会社と飲食店との契約に基づいて会社が店へ支払う方法と、社員へ現金を補助する方法を、契約書や請求・精算の流れで区別してください。
社会保険は、購入金額とは違う価額で確認する
健康保険・厚生年金保険では、労働の対償として食事を現物で支給する場合、厚生労働大臣が定める価額を使って報酬を確認します。会社が弁当業者に払った購入金額を、そのまま社会保険の現物給与の価額に使う扱いではありません。
本人から食事代を徴収する場合は、告示に基づく現物給与の価額の3分の2以上を負担していれば、現物による食事の供与はないものとして扱います。負担が3分の2未満なら、現物給与の価額から本人負担額を差し引いた額を報酬に含めます。
所得税の「食事の価額の半分」と、社会保険の「告示額の3分の2」は、比率も計算の土台も違います。給与ソフトで所得税を非課税に設定したことだけを理由に、社会保険の計算からも外さないようにしましょう。
食事の現物給与価額は2026年4月から改定されています。適用する地域や食事の区分を一覧表で確認し、古い価額を使い続けていないか点検してください。
健康保険組合では規約に別段の定めがある場合もあるため、加入先の取扱いも確認が必要です。
月ごとの利用記録を、給与計算につなげる
制度を導入したら、社員ごとの利用日・食数、食事の価額、本人負担額、会社負担額を追えるようにします。会社宛ての請求書だけでなく、利用記録や本人からの徴収記録もそろえると、月ごとの計算を確認しやすくなります。
そのうえで、所得税の確認欄と、社会保険の現物給与の確認欄を分けて管理しましょう。担当者が替わっても、どの資料と基準で処理したか分かる形にしておくことが大切です。
既に運用している場合は、直近の利用明細と給与の処理を照合してみてください。差があれば、支払方法の認識違いなのか、本人負担の集計漏れなのか、価額の更新漏れなのかを調べ、制度説明や給与事務の手順に反映します。
食事補助を利用しやすくする工夫と、給与計算を正しく行う準備は、一緒に進められます。税務上の具体的な課税判断は税理士等とも確認し、社内の運用と整合させましょう。
自社で確認すること
- 食事補助の規程、飲食店等との契約、精算書を見て、食事の支給なのか、社員への現金補助なのかを確認する。
- 社員別の利用明細と本人負担額を集計し、所得税の半額負担・月額上限と、社会保険の告示額・3分の2基準を別々に点検する。
- 給与の設定と計算記録を見て、現物給与価額の改定や加入する健康保険の取扱いが反映されているか確認する。
食事補助の制度と給与・社会保険の処理を整理したいときは、社会保険労務士法人エリクスへご相談ください。
参考資料(一次資料)
国税庁「No.2594 食事を支給したとき」(2026年4月1日現在)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm
国税庁「使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/44.htm
日本年金機構「令和8年4月から現物給与の価額が改正されます」(食事の価額・Q10)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150511.files/2026.pdf
厚生労働省「厚生労働大臣が定める現物給与の価額の取扱いについて」(2026年3月17日)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9873&dataType=1&pageNo=1
(確認日:2026年10月23日)
