退職者の最後の給与、厚生年金保険料は何月分まで?届出と控除の確認
退職者の最後の給与を計算する前に、退職日、社会保険の資格喪失日、控除する保険料の対象月を並べて確認しましょう。「今月退職するから、今月支給する給与では保険料を引かない」と決めると、取り漏れや二重控除につながりかねません。
ここでは、退職に伴う資格喪失届と、厚生年金保険料の対象月の考え方を整理します。給与から引く月と、保険料が発生する月を分けて見ることが出発点です。
資格喪失日は、退職日の翌日
退職による健康保険・厚生年金保険の資格喪失日は、退職日の翌日です。日本年金機構の案内では、事業主が資格喪失届を事実発生から5日以内に提出することとされています。
社内では、退職日が確定した段階で、届出担当者と給与担当者に同じ日付を共有する運用をおすすめします。最終出勤日だけを連絡しても、退職日まで一致しているとは限らないため、退職に関する書類と照合してください。
届出を給与の締め日まで保留する運用になっていないかも確認したいところです。提出期限の管理と、最終給与の計算日程は別々に持つと、どちらかの作業待ちで処理が止まるのを防げます。
月末退職かどうかで、保険料の対象月が変わる
厚生年金保険料は月単位で計算され、原則として資格喪失日の属する月の前月分まで納めます。月末に退職すると資格喪失日は翌月1日になるため、退職した月分までが対象です。
一方、月の途中で退職して資格喪失日も同じ月になる場合は、原則として前月分までとなります。ただし、資格を取得した月に資格を喪失する場合には別の取扱いがあるので、入社直後の退職を同じ判断で処理しないようにしてください。
月の途中まで勤務したことを理由に、厚生年金保険料を勤務日数で日割りする考え方ではありません。勤怠に応じた給与額の計算と、保険料の対象月の判定を分けて確認する必要があります。
最後の給与では「何月分を引いたか」を確認する
対象月が分かっても、最後の給与で控除する額がすぐ決まるわけではありません。これまでの給与で何月分を控除しているかを、賃金台帳や給与計算の設定から確認しましょう。
日本年金機構は、月末退職の場合、給与計算の締切日によっては退職時の給与から前月分と当月分を控除する場合があると案内しています。2か月分の控除だから必ず誤り、あるいは退職者だから必ず2か月分、と一律に判断するのは避けたいところです。
実務上は、保険料の対象月ごとに「控除済みの支給日」「未控除額」を整理すると確認しやすくなります。給与明細の控除額だけを見比べるより、どの月分の精算なのかを担当者間で共有できます。
なお、ここで説明している保険料の取扱いは厚生年金保険についてです。健康保険などを含む控除全体の確認では、制度ごとの取扱いを確かめ、同じ処理になると推測でそろえないでください。
同じ月に資格取得・喪失した場合は、還付まで確認する
厚生年金保険の資格を取得した月に資格を喪失した場合は、保険料の納付が必要になります。ただし、その月にさらに厚生年金保険の資格、または国民年金の資格(第2号被保険者を除く)を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料の納付が不要となります。
この場合、日本年金機構の案内では、会社に還付のお知らせが届き、還付後に会社から本人へ被保険者負担分を返す流れです。短期間の在籍だったという理由だけで、最初から控除を省く判断はしないようにしましょう。
また、退職時の給与計算を終えても、後日届く還付のお知らせへの対応が残る場合があります。通知を受け取る人と本人への返金を処理する人が異なる会社では、連絡先と担当者をあらかじめ確認しておくと安心です。
自社で確認すること
- 退職に関する書類と資格喪失届を照合し、退職日の翌日が喪失日になっているか、提出期限と併せて確認する。
- 最終給与の計算前に賃金台帳を見直し、厚生年金保険料を何月分まで控除済みか整理する。
- 同月に資格取得・喪失した人の記録を確認し、還付通知の確認担当と本人への返金担当を決める。
退職時の届出と給与控除が合っているか判断しにくい場合は、社会保険労務士法人エリクスへご相談ください。
参考資料(一次資料)
日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20150407-02.html
日本年金機構「月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。」
https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/hihokensha/20140902-01.html
