高年齢の従業員の転倒を防ぐには?会社が見直したい職場と作業ルール
高年齢の従業員が働く職場では、「足元に気を付けて」と伝えるだけでなく、危険な場所や負担の大きい作業を会社として点検することが大切です。まずは、通路・階段・日々の作業手順を、実際に働く本人と一緒に確認してみませんか。
2026年4月1日から適用されている「高年齢者の労働災害防止のための指針」は、職場の実情に応じた対策を示しています。今回は、経営者や人事担当者が現場と協力して進めたい確認事項を整理します。
新しい指針に沿って、会社の担当を決める
高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理など、必要な措置を講ずることは事業者の努力義務です。厚生労働省は、その取組のために2026年2月に指針を策定しました。
指針では、経営トップが方針を示し、担当者や組織を明確にすることを挙げています。安全衛生委員会等を設けていない事業場でも、労働者の意見を聴く機会などを通じて話し合うことが示されています。
小さな会社であれば、まず経営者と現場責任者で点検担当を決めるところから始めましょう。担当と確認日を決める方法は、取組を具体化するための実務上の提案です。
危険な場所を洗い出し、改善の順番を考える
指針は、災害やヒヤリハットの事例から危険を洗い出し、その大きさに応じて対策の優先順位を検討するよう示しています。こうした手順を「リスクアセスメント」といいます。
対策には順番があります。危険な作業そのものの廃止・変更などを検討し、次に手すりの設置や段差の解消、マニュアルの整備、身体への負担を軽くする個人用装備の使用という順で考えます。
転倒防止では、通路を含む作業場所の明るさ、階段の手すり、段差、床の滑りやすさが点検の手掛かりになります。指針には、水分や油分を放置せず清掃することや、滑りやすい箇所への防滑素材の採用なども示されています。
現場を見るときは、従業員に「どこで足を取られそうになったか」「荷物を持つと通りにくい場所はないか」と尋ねてみてください。これは危険を具体的に把握するための聞き取り例であり、実際に事故が起きたという意味ではありません。
注意書きを貼ったことで点検を終えず、危険を減らす設備や作業方法まで検討することが要点です。
作業の速さや休み方も点検する
設備を確認した後は、仕事の進め方も見直します。指針は、ゆとりのある作業スピードや無理のない姿勢に配慮したマニュアル、複数の作業を同時に進める負担への配慮などを挙げています。
重量物を扱う作業では、小口化や取扱回数の減少、身体的な負担が大きい作業では定期的な休憩や作業休止時間の運用も検討事項です。一律に作業量を決める前に、現場の手順と負担を確かめましょう。
実務では、作業手順書に書かれた方法と、忙しい時間帯の実際の動きを比べると確認しやすくなります。改善案には担当者と実施予定日を添え、後日、負担が減ったかを本人に尋ねる方法が考えられます。
健康・体力の情報は、取扱いも先に決める
指針では、健康や体力の状況に応じた対応も示されています。ただし、年齢だけで一律に判断するのではなく、個々の状況と職場環境の改善状況を踏まえることが必要です。
体力の状況を把握する際は、不利益な取扱いを防ぐため、本人の同意の取得方法や情報の取扱方法などの手続を定めることが示されています。結果を集める前に、その目的と取扱いを整理してください。
健康診断や体力チェックの結果から労働時間や作業内容を見直す必要がある場合、指針は産業医等の意見を聴いて実施することとしています。会社だけで医学的な判断をせず、本人との話合いも大切にしましょう。
自社で確認すること
- 通路・階段の明るさ、段差、滑りやすさを現場担当者と点検し、改善の優先順位を決める。
- 作業手順書と実際の作業を比べ、重い物の扱い方や休憩の取り方を確認する。
- 健康・体力の情報を扱う目的、本人の同意の取得方法、情報の取扱手続を確認する。
現場の点検を社内の担当体制や作業ルールの見直しにつなげたい場合は、社会保険労務士法人エリクスへご相談ください。
参考資料(一次資料)
厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針」に関する公示
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/newpage_00010.html
厚生労働省「高年齢者の労働災害防止のための指針」本文
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001654297.pdf
厚生労働省「エイジフレンドリー指針を策定しました」リーフレット
