定年後再雇用、役割と賃金をどう決める?会社が確認したい4つの論点
定年後の再雇用で、まずそろえる情報
定年を迎える社員が出ると、「これまでと同じ仕事を頼めるか」「賃金をどこまで変えられるか」「契約を毎年更新してよいか」という相談が増えます。会社が先に確認したいのは、個別の金額よりも、制度の対象、仕事の内容、更新の考え方を一つの記録にまとめることです。
厚生労働省は、定年を65歳未満に定める事業主に、65歳までの安定した雇用を確保するため、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかを求めています。継続雇用制度は、本人が希望すれば定年後も引き続き雇用する再雇用制度などを指し、希望者を対象にする仕組みが基本です。
1 自社の制度と対象者を確認する
最初に、就業規則の定年条項、再雇用規程、雇用契約書のひな形を並べます。定年年齢、再雇用の申出方法、契約期間、更新の判断材料、勤務地・職務の範囲が文書ごとに一致しているかを確認します。
60歳以上の社員が今いなくても、制度を整えておく必要があると厚生労働省のQ&Aで説明されています。
「会社が必要と認めた人だけ」「評価が一定以上の人だけ」のように、年齢到達時に独自の選別基準を置いていないかも確認します。制度の対象や例外を設ける場合は、既存の解雇事由・退職事由との関係を含め、規程の文言と運用実態を確認することが重要です。
2 役割と賃金を別々に決めない
再雇用後に、責任、担当顧客、決裁範囲、勤務日数、勤務時間がどう変わるのかを職務記述や面談記録に残します。厚生労働省Q&Aは、再雇用後の労働条件は、フルタイム・パートタイムなどの働き方、賃金、待遇を、法令を守りながら事業主と労働者が十分に話し合って決めることが重要としています。
賃金差がある場合も、「定年後だから」という一言だけで説明を終えないことが大切です。通常の労働者との職務内容、職務内容と配置変更の範囲、その他の事情に違いがあるかを整理し、その違いに対応した処遇になっているかを点検します。
仕事内容がほぼ同じなのに責任や成果の説明ができない場合は、制度の趣旨だけでなく、待遇差の説明資料も見直すきっかけになります。
3 契約更新の運用を先に決める
1年契約を採用する場合は、更新時期、本人への確認方法、会社が確認する事実、記録の保管者を決めます。厚生労働省Q&Aは、65歳前に年齢だけを理由として雇用を終わらせる制度は適当でないとし、65歳までは原則として契約が更新されること、更新しない場合は客観的に合理的な理由などが必要と説明しています。
このため、更新判断を「社長の印象」や口頭の評価だけにしない運用が必要です。勤務状況、業務遂行上の課題、改善を求めた内容、本人との面談日を時系列で残し、規程に書いた基準と実際の判断がずれていないかを毎回確認します。
個別事案の結論は、事実関係を踏まえて専門家に確認しましょう。
4 70歳までの措置と報告を分けて管理する
65歳までの雇用確保措置とは別に、65歳から70歳までの就業機会を確保する措置は、定年引上げや継続雇用などの雇用による方法のほか、業務委託契約などの創業支援等措置を含む努力義務です。自社がどの方法を採るか、対象年齢、本人の希望を確認する窓口を整理しておくと、将来の制度変更にも対応しやすくなります。
また、事業主は、定年や継続雇用制度などの状況を毎年報告します。厚生労働省は、毎年6月1日現在の状況をまとめて提出すること、従業員に高年齢者がいない場合も報告が必要であることを案内しています。
令和8年報告版では様式が改正され、6月1日以降にダウンロードした様式を使うよう示されています。制度点検と報告作業を別担当にせず、元データを共有しておくと転記ミスを減らせます。
会社で今日からできる確認順
1. 就業規則と再雇用規程の定年・対象・更新条項を確認する。
2. 定年前面談で、本人の希望、職務、勤務時間、勤務地を記録する。
3. 再雇用後の役割と賃金の根拠を、通常の社員との違いと一緒に整理する。
4. 更新判断の事実と面談記録を保管し、報告書の元データに反映する。
制度があっても、規程・契約書・面談記録のどこかが食い違うと、担当者が変わった際に説明が途切れます。対象者が出る前に、自社の定年年齢、再雇用の申出期限、役割変更の範囲を一枚にまとめ、毎年見直す運用を始めるのが現実的です。
個別の規程改定、賃金設計、更新拒否の可否は、会社の規模や職務、これまでの運用で確認事項が変わります。事実関係を整理したうえで、早めに専門家へご相談ください。
社会保険労務士法人エリクスへご相談ください
参考資料(一次資料)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page09_00001.html
https://www.kourei-koyou.mhlw.go.jp/qa01.html
