【女性活躍推進】100人以下の企業も「行動計画」策定を検討すべき理由
【女性活躍推進】100人以下の企業も「行動計画」策定を検討すべき理由
[労務管理]
2026年03月11日
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、女性が職業生活において十分に能力を発揮できる環境を整備することは、企業の持続的な成長にとって欠かせない経営課題となっています。国は「女性活躍推進法」を通じてその推進を後押ししており、近年は義務対象の拡大や情報公表の強化など、制度の充実が続いています。まだ「努力義務」の範囲にある従業員100人以下の企業であっても、今この問題に向き合うことが、採用力・定着率・生産性のいずれの面においても大きなアドバンテージにつながります。
女性活躍推進法とは?制度の基本を押さえる
「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、2016年に施行された法律で、女性が希望に応じて職業生活で活躍できるよう、企業や国・地方公共団体に対して具体的な取組を求めるものです。
2022年の法改正では、行動計画の策定・届出・公表が義務付けられる対象が「常時雇用する労働者が301人以上」から「101人以上」に拡大されました。これにより、多くの中堅企業が新たに義務の対象となりました。
制度の主な柱は以下の3点です。
一般事業主行動計画の策定・届出・公表:女性の活躍推進に向けた数値目標と具体的取組を定めた計画を策定し、都道府県労働局へ届け出るとともに、外部に公表する
女性活躍に関する情報公表:採用者に占める女性の割合、管理職に占める女性の割合など、規定の項目を自社のウェブサイト等で公表する
えるぼし認定:行動計画の策定・届出を行った企業が一定の基準を満たすと、厚生労働大臣から「えるぼし認定」を受けることができ、認定マークを採用活動等に活用できる
現行ルール:100人以下の企業は「努力義務」にとどまる
現行法では、常時雇用する労働者が100人以下の企業については、行動計画の策定・届出・公表はいずれも「努力義務」にとどまります。義務がないため、日々の業務に追われる中小企業では対応が後回しになりがちであり、「まだうちには関係ない」と考えている経営者・担当者も少なくないのが実態です。
しかし、法改正の方向性を見ると、義務対象のさらなる拡大に向けた議論が続いており、将来的に100人以下の企業にも義務が及ぶ可能性は十分に考えられます。義務化されてから慌てて対応するのではなく、今から準備を進めておくことが、実務上のリスク管理としても賢明な選択といえます。
それでも「今」取り組むべき3つの理由
(1)採用競争力の向上
求職者、とりわけ女性や若年層は、企業の働き方や職場環境に関する情報を重視する傾向が強まっています。行動計画の公表やえるぼし認定の取得は、自社の取組を「見える化」する有力な手段です。採用媒体に認定マークを掲載できるだけでなく、応募者への訴求力が高まり、採用コストの削減にもつながると解されます。
(2)認定制度・公共調達での優遇
えるぼし認定を取得した企業は、公共調達(国や自治体の入札)において加点評価を受けられる制度があります。また、育児・介護との両立支援に取り組む企業には「くるみん認定」(次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度)との連動も可能で、両立支援等助成金の活用につながるケースもあります。
(3)人材定着と生産性の向上
育児や介護を抱える従業員が離職せずに働き続けられる環境を整えることは、採用・教育コストの削減に直結します。女性の管理職登用や柔軟な働き方の推進は、組織全体のモチベ
ーション向上にも寄与し、中長期的な生産性向上につながると考えられます。
行動計画策定の実務ステップ
(1)状況把握・課題分析
まず自社の現状を数字で把握することが出発点です。確認すべき主な指標は以下のとおりです。
採用者に占める女性の割合
管理職に占める女性の割合
男女別の平均勤続年数
労働時間の状況(残業時間の男女差など)
これらのデータを収集・分析することで、自社が抱える課題(例:採用は多いが管理職への登用が進んでいない、女性の離職率が高い、など)が明確になります。
(2)数値目標と取組内容の設定
課題分析を踏まえ、具体的な数値目標を設定します。例えば「3年以内に管理職に占める女性の割合を現状の10%から20%に引き上げる」「女性の平均勤続年数を男性の水準に近づける」といった形です。目標は「達成可能かつ挑戦的」な水準に設定することが重要で、形式的な数字合わせにならないよう注意が必要です。
(3)計画の社内周知・実行・効果測定
計画は策定するだけでなく、従業員への周知と定期的な進捗確認が不可欠です。厚生労働省が提供する「両立支援のひろば」などの無料ツールを活用すれば、100人以下の企業でも行動計画の様式作成や情報公表をスムーズに行えます。
実務上の注意点:形式だけの計画にしないために
行動計画策定において最も重要なのは、経営トップのコミットメント(関与・意思表明)です。人事担当者だけが動いても、現場の管理職や従業員の意識が変わらなければ実効性は生まれません。社長や役員が自らメッセージを発信し、計画推進の旗振り役となることが求められます。
また、計画を策定して終わりにせず、半期ごと・年度ごとに進捗を確認し、必要に応じて目標や取組内容を見直す運用体制を構築することが重要です。従業員への周知方法についても、社内掲示板・イントラネット・朝礼など複数の手段を組み合わせ、全従業員が計画の内容を認識できるよう工夫することが望まれます。
まとめ
従業員100人以下の企業は現時点では努力義務ですが、法改正の方向性・採用力・人材定着の観点から、早期に取り組むことが有利です
行動計画は「状況把握→目標設定→実行・見直し」のPDCAサイクルで継続的に運用することが重要です
厚生労働省の無料ツール(両立支援のひろば等)やえるぼし認定・くるみん認定を積極的に活用することで、中小企業でも実践的な取組が可能です
形式的な計画にとどまらないよう、経営トップの関与と従業員への周知・進捗管理の仕組みづくりが鍵となります
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
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