スポットワーク応募時に労働契約成立 ― 企業が知っておくべき「雇用トラブル防止のポイント」 ―
近年、短時間・単発の就労をアプリで手軽に依頼・応募できる「スポットワーク(スポットバイト)」が急速に広がっています。一方で、企業側の直前キャンセルや早上がりの指示をめぐるトラブルも増加しており、全国の労働基準監督署には賃金不払いなどの相談が相次いでいます。始期付解約権留保付労働契約(労働契約の開始時期は決まっているが、内定の時期から実際に入社し就労するまでは一定の期間があり、入社までにやむをえない事由が発生した場合には内定を取り消す権利がある労働契約)が成立している以上、事前のキャンセルは認められず、キャンセルに対しては休業手当を支払うのが大前提となります。
こうした状況を受け、厚生労働省は「スポットワーク」における労務管理上の留意事項をまとめたリーフレットを作成しました。中でも注目されるのが「特段の合意がない限り、応募時点で労働契約が成立する」という点です。
■ 労働契約は「応募時点」で成立
リーフレットでは、面接などを行わずに先着順で就労が決まるようなケースについて、「事業主が求人を掲載し、スポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして、労働契約が成立すると考えられる」と明記されています。このため、企業の都合によるキャンセルは休業手当の支払いが必要となる場合があります。
■ 休業手当・早上がりの取扱い
労働契約成立後に事業主の判断で仕事を取り消したり、予定より早く勤務を終わらせた場合には、
• 休業手当を支払う必要があります
• 事業主の故意・過失による休業であれば、賃金全額の支払い義務が発生する可能性もあります
また、休業手当は所定の賃金支払日までに支払うことが求められています。
■ 契約内容の変更は「双方合意」が前提
一度確定した労働日・労働時間を変更するには、労使双方の合意が必要です。あらかじめ、キャンセルや変更の条件を明確にした解約権留保付契約を締結する場合でも、労働者に不利な内容にならないよう慎重に設定することが求められます。
■ 賃金・労働時間の注意点
スポットワークにおいても、通常の雇用と同様に労働基準法が適用されます。 次のような点にも注意が必要です。
・準備・後片付け時間
制服の着替え、清掃、片付けなども「労働時間」に含まれる。始業・終業時刻設定に反映させること。
・賃金支払い
労働条件通知書に記載された所定支払日までに支払わなければ労働基準法違反となります。
■ 企業が取るべき対応
スポットワーカーを受け入れる企業は、次の点を確認・整備しておくことが重要です。
• 募集段階で「労働契約成立のタイミング」「キャンセル時の対応」を明示
• 労働条件通知書の交付
• 休業時・早退時の賃金処理ルールを社内で統一
• 準備・片付け等を含めた労働時間の正確な把握
これらを明確にしておくことで、トラブルを未然に防ぎ、適正なスポットワークの活用につなげることができます。
■ まとめ
スポットワークは、人手不足の中で柔軟な働き方を実現する有効な仕組みですが、雇用契約・労働法の原則は変わりません。「応募=契約成立」という厚労省の見解を踏まえ、企業側は従来以上に慎重な労務管理が求められます。 スポットワークの適正運用やトラブル防止策についてのご相談は、社会保険労務士法人エリクスまでお気軽にお問い合わせください。
