リモートワーク制度の見直し、どう進める?
ハイブリッド勤務と人事制度の整合性
コロナ禍を経て、テレワークは一時的な措置から“新たな働き方”へと変化しました。現在、多くの企業が出社と在宅を併用する「ハイブリッド勤務」に移行しています。
しかしその一方で、
- 出社・在宅で評価に差が出てしまう
- マネジメントが難しくなった
- 社員同士の一体感が薄れた
- 出社ルールが曖昧で不公平感がある
といった声が現場から多く聞かれます。こうした状況を放置すれば、優秀な人材の流出や組織力の低下を招く可能性も。今こそ、リモートワーク制度の再設計が求められています。
Step1:現行制度の「見える化」から始める
制度を見直す第一歩は、現在のルールと実態のギャップを把握すること。以下のようなチェック項目とよくある課題例が役立ちます。
- 出社ルール
誰が・いつ・どの業務で出社するのか➡ルールが曖昧、部門ごとにばらつきあり
- 勤務時間管理
始業終業の記録方法、休憩取得状況➡実態と記録に差異がある
- 評価制度
働きぶりの見えにくさ、上司の主観➡定量評価が乏しく在宅勤務者が不利
- 業務プロセス
対面前提の業務が残っていないか➡紙文化や押印、非電子化プロセスがボトルネック
- コミュニケーション
会議・相談・雑談の機会➡孤立する社員が出ている
まずはこのような観点で現状を棚卸しし、制度と実態のギャップを可視化しましょう。
Step2:制度設計で整合性をとる3つのポイント
ハイブリッド勤務に対応した制度設計には、以下の3点が重要です。
① 勤務ルールは「明文化」と「柔軟性」の両立を
- 出社・在宅の判断基準(業務の内容や曜日など)を明文化
- 例外を認める裁量も明記し、現場の混乱を防止
② 評価制度は「成果」と「行動プロセス」の両面で
- リモートでも把握できる定量的なKPIの設定
- チーム貢献や行動を評価する360度評価や自己申告の導入
- 上司との面談やフィードバック機会を定期的に確保
③ 勤務時間と業務量の「見える化」
- Slack、Teams、Notion等による業務進捗の共有
- 時間管理ツールを活用し、稼働状況を“信頼ベース”で共有
- 管理ではなく“共に働く感覚”の醸成を
Step3:トラブルを防ぐ「就業規則・社内規程」の整備
制度を変更する際は、就業規則やテレワーク規程の見直しも必須です。規程が曖昧なままでは、トラブルや労基署の是正指導に発展しかねません。
見直すべき主な項目:
- 労働時間・休憩時間の扱い(中抜け、柔軟な勤務への対応)
- 在宅勤務手当の支給有無・金額
- 情報セキュリティ(端末管理・自宅Wi-Fi使用時の対策)
- 費用負担(通信費・光熱費等の取り扱い)
これらは、社会保険労務士の専門的な知見が求められる領域です。制度と規程の整合性をとることで、リスクを未然に防ぐことができます。
Step4:制度を「企業文化」に昇華させるために
せっかく制度を整備しても、社員の納得と活用がなければ意味がありません。運用面の工夫が、制度の定着に直結します。
制度浸透のための具体策:
- 社員向け説明会やQ&Aの実施
- 管理職向けマネジメント研修
- 試験導入(トライアル運用)と定期的なフィードバック
- 社内コミュニケーション施策の再構築(雑談タイム、定例出社日など)
ハイブリッド勤務は「特例」ではなく、これからの「標準」です。組織に合わせて制度を最適化し、働き方の多様性を企業文化として定着させることが、これからの人材確保・定着のカギとなります。
◎見直しは“制度”と“運用”の両輪で
リモートワーク制度の見直しは、制度設計だけでなく、現場の運用支援も含めた“両輪”で進めることが重要です。特に中小企業では、負担の少ないスモールスタートから段階的に整備するのが現実的です。
運用上の盲点や労務トラブルを防ぐためにも、専門家のサポートをうまく活用しましょう。
ご相談は社会保険労務士法人エリクスまでお気軽にお問い合わせください。